店舗内装は、壁や床だけを直す仕事ではない
ネパール料理店の現場で、初心に戻らせてもらった話
今、あるネパール料理店の工事に入っています。
店舗の内装工事というと、壁を仕上げたり、床を整えたり、設備を納めたり、そういう“作業”のイメージが強いかもしれません。
もちろん、それも大事な仕事です。
でも実際に現場に入っていると、そこには図面や材料だけでは分からない、人の背景があります。
今回の現場で印象に残っているのは、店主ご家族の息子さんとのやり取りでした。
お母さんは18年前に日本へ来られたそうです。
息子さんは4年前に日本へ来て、こちらで学校に通い、今は日本の企業で働いているとのこと。
そして今回、ご縁があってご両親がネパール料理店を出店されることになり、息子さんもそのお手伝いに入るそうです。
その話を聞いた時点で、私はかなり刺激を受けました。
異国の地で、言葉も文化も違う中、お店を始める。
しかも家族で力を合わせて前に進もうとしている。
自分は日本で生まれて、日本で仕事をしていて、ある程度この国のルールも分かっている。
それなのに、まだまだ言い訳している部分があるんじゃないか。
正直、そう思いました。
「自分はもっとできるだろ。」
そんな気持ちにさせてもらいました。
現場では、息子さんがよく気を使ってくれました。
お茶を出してくれたり、日常会話をしたり、いろいろな話をしながら作業を進めていました。
中でも印象に残っているのが、彼の出身地の話です。
ネパールのポカラという場所だそうです。
自然がとても綺麗で、山も湖もあって、本当に良いところだと話してくれました。
私が「行ってみたいな」と言うと、彼は自然にこう言ってくれました。
「僕が案内しますよ。」
その言葉が、すごくあたたかかった。
大げさな話ではなく、今の日本でこういう距離感は少し減ってきている気がします。
少なくとも、今の私の周りでは、こういうアットホームな空気に触れる機会は多くありません。
国が違うとか、言葉が違うとか、そういうことの前に、人としての距離の近さがありました。
もう一つ、忘れられないことがあります。
私が作業をしている時、息子さんが食い入るように見ていたことです。
ただ何となく見ているのではなく、質問をして、自分の中に取り込もうとしているような目でした。
手元を見る。
納まりを見る。
どうしてそうするのかを聞く。
その目つきには、ストイックさがありました。
この先、彼がどんな世界で生きていくのかは分かりません。
飲食の道に入るのか、日本の企業でさらに経験を積むのか、まったく別の道に進むのか。
でも、素直に思いました。
成功してほしいな、と。
そして同時に、自分も初心に戻らなければいけないと思いました。
仕事を覚えようとしていた頃。
人の手元をじっと見ていた頃。
分からないことを聞いて、少しでも自分のものにしようとしていた頃。
いつの間にか、慣れや経験に頼ってしまうことがあります。
でも本当は、現場に立つたびに学ぶことがある。
人と関わるたびに、自分の姿勢を見直す機会がある。
店舗内装は、壁や床だけを直す仕事ではありません。
その場所で、誰が、どんな想いで店を始めるのか。
そこに来る人に、どんな時間を過ごしてほしいのか。
家族にとって、その店がどんな意味を持つのか。
そういう背景に触れながら、空間を整えていく仕事だと思っています。
今回の現場では、私の方が大切なものをもらった気がします。
異国の地で前に進む家族の姿。
自然に人を迎え入れるあたたかさ。
そして、仕事を自分のものにしようとする真剣な目。
自分ももう一度、そういう心持ちで仕事に向き合いたい。
そんなことを感じた店舗内装の現場でした。
ichi crafters
原
店舗の内装についてのご相談は、こちらからどうぞ。